その背中、抱きしめて 【下】
「ゆず、ゆず」
優しく肩を揺すられる。
気付いて目を開けると、さくらちゃんと羽柴くん、それから相川くんと桜井くんの顔が見えた。
「私…」
「ゆず、起きれる?体辛い?」
さくらちゃんがゆっくり体を起こしてくれる。
(今、何時…?)
壁の時計を見ると、ちょうどお昼休みだった。
「…みんな、ごめんね…」
4人に謝る。
心配かけてるよね。
お昼休みにまで来てくれて。
「ゆず、今日は帰ろう?そんなんじゃ授業受けらんないし、部活も無理だよ。明日は土曜で学校もないし、土日部活お休みしな」
さくらちゃんが泣きそうなほど心配そうな顔でそう言ってくれる。
「でも、部活…みんなに迷惑かけちゃう」
「部活のことなんて気にすんな。佐古田がちゃんとフォローしてくれるから。ゆっくり休んで心も体も万全にしとけ」
羽柴くんに頭をくしゃくしゃっとされた。
「この際だから俺、家まで送っていきますよ」
相川くんがさくらちゃんと羽柴くんに向かって言った。
「いいの?朝から色々ありがとね」
「いいですよ、ゆず先輩にはお世話になってるから」
みんなの会話も他人事のように、ふわふわした気分で聞いていた。
頭が全然働かない。
「ゆず先輩、俺カバン取ってくるからちょっとだけ待っててください」
相川くんが小走りに保健室から出て行った。