その背中、抱きしめて 【下】



「ゆず、ゆず」


優しく肩を揺すられる。


気付いて目を開けると、さくらちゃんと羽柴くん、それから相川くんと桜井くんの顔が見えた。



「私…」



「ゆず、起きれる?体辛い?」


さくらちゃんがゆっくり体を起こしてくれる。


(今、何時…?)


壁の時計を見ると、ちょうどお昼休みだった。



「…みんな、ごめんね…」


4人に謝る。

心配かけてるよね。

お昼休みにまで来てくれて。


「ゆず、今日は帰ろう?そんなんじゃ授業受けらんないし、部活も無理だよ。明日は土曜で学校もないし、土日部活お休みしな」

さくらちゃんが泣きそうなほど心配そうな顔でそう言ってくれる。


「でも、部活…みんなに迷惑かけちゃう」


「部活のことなんて気にすんな。佐古田がちゃんとフォローしてくれるから。ゆっくり休んで心も体も万全にしとけ」

羽柴くんに頭をくしゃくしゃっとされた。


「この際だから俺、家まで送っていきますよ」

相川くんがさくらちゃんと羽柴くんに向かって言った。


「いいの?朝から色々ありがとね」

「いいですよ、ゆず先輩にはお世話になってるから」



みんなの会話も他人事のように、ふわふわした気分で聞いていた。

頭が全然働かない。



「ゆず先輩、俺カバン取ってくるからちょっとだけ待っててください」


相川くんが小走りに保健室から出て行った。



< 44 / 131 >

この作品をシェア

pagetop