その背中、抱きしめて 【下】
その晩も、次の日も、その次の日もご飯が全く喉を通らなかった。
体がダルくてずっとベッドで横になってた。
お姉ちゃんがスポーツドリンクとヨーグルトとプリンを買ってきてくれて、それは何とか喉を通った。
夕方、インターホンが鳴って何だか下の階がガヤガヤしてる。
誰かが階段を上がってくる音がして、部屋のドアがノックされた。
私が返事をする前にドアが開いてお姉ちゃんが顔を出す。
「ゆず、男バレの子が来てくれたよ」
入って来たのは、相川くんと桜井くんだった。
「ゆず先輩、具合どうですか?」
桜井くんが心配そうに近づいてくる。
「なんか…やつれましたね。食べてないんですか?」
相川くんもベッドのそばに来た。
「うん、大丈夫だよ。試合帰りに来てくれたんだ?ありがとうね」
ほんとに優しい子たち。
こうやって慕ってもらえるって本当に嬉しい。
「これ、お見舞いです」
そう言って桜井くんがコンビニの袋をベッドの上に置いた。
中を覗いてみると、エネルギー補給ゼリーや栄養ドリンク、ヨーグルトとスイーツが入っている。
「こんなにいいの?」
「食欲ないんじゃないかなって思って。案の定痩せちゃってるし。これで体力回復してください」
相川くんと桜井くんが笑う。
この子たちの笑顔を見ると元気になる。
嬉しくなる。
「ありがとー。2人の顔見たら元気になってきたよ」
「マジですか?」
2人が片手でハイタッチした。