その背中、抱きしめて 【下】
「あ、あの写真見ていいですか?」
相川くんが壁のコルクボードを指さす。
「いいよ。中学の頃の写真が多いかな」
私が言うなり、2人は立ち上がってコルクボードに顔を近づける。
「あ、これゆず先輩だ。まだ顔が幼い!かわいい!」
「これ文化祭?男物の制服着てる」
相川くんの目に留まった写真。
中3の文化祭の写真だね。
「男装・女装喫茶やったんだよ。男子は女子の制服着て、女子は男子の制服着て。制服は学校指定のじゃなくてコスプレ用の買ったんだけどね」
「ゆず先輩のこの髪ってウィッグ?」
桜井くんが興味津々に食いついてくる。
「そうそう。チャラい男子っぽいでしょ?」
「似合ってる!てか、こんなチャラい男いそう!ゆず先輩の男装イケメンすぎ!」
桜井くんがケラケラ笑う。
「けっこう人気あったんだよ、その男装。女の子に写真お願いされたりとか」
「されそう、されそう!で、肩組んで一緒に撮ってあげたりとかしたんですか?」
相川くんも笑いながら聞いてくる。
「したよー。でも私背が低いからイスに座ったままね」
2人が爆笑した。
あれ、私笑ってる。
2人につられて笑ってるじゃん。
……笑えてるよ、私。