その背中、抱きしめて 【下】
コルクボードの写真を見ながら色々質問されて、それに1つ1つ答えて3人で笑って。
「あ、やべ。ゆず先輩ん家、そろそろ晩ご飯じゃね?いい匂いしてきた。帰ろうぜ、一也」
相川くんが桜井くんを促してカバンを持った。
(もっと喋ってたいけどな…)
うちがご飯なら2人の家も夕飯の時間だもんね。
玄関まで見送りに下りた。
お母さんもキッチンから出てくる。
「2人ともわざわざ来てくれてどうもありがとうね。これ少しだけど食べながら帰って」
そう言ってお母さんは2人にキッチンペーパーに包んだ揚げたてのコロッケを渡した。
(あ、前に高遠くんにもコロッケ渡してたな…)
もうずいぶん前のことだけど。
せっかく忘れてた高遠くんのことを思い出して、ちょっと切なくなった。
「ありがとうございます。うっわ、うまそー!」
2人の声がハモる。
「じゃあゆず先輩、また明日。今晩ゆっくり休んでくださいね」
「うん。来てくれてありがとね。気を付けて帰ってね」
2人が帰った後。
お母さんが
「あの子たちが来て、ちょっと元気になったみたいね」
って安心したように笑った。