その背中、抱きしめて 【下】
教室に入ると、みんなが声をかけてくれた。
金曜日、朝からずっと保健室で寝てて、そのままお昼に帰っちゃったから心配してくれる。
この新しいクラス、なんだか最初っから全体がまとまってて楽しそうだと思った。
みんな明るいし”お祭り大好き!”って雰囲気。
心配してくれたみんなにお礼を言って、席に着く。
「おはよ、ゆず」
「おはよ」
隣の席の洋平くんとあいさつ。
白井洋平(しらいようへい)くん。
初めて一緒のクラスになった隣の席の男の子。
明るくてイケメンでクラスの人気者。
1.2年の頃も何となく存在は知ってた。
休み時間の廊下でも、いつも周りに人が集まってて目立ってたから。
新学期初日に、洋平くんがさくらちゃんの真似して私のこと”ゆず”って呼んだら、クラスのみんなが私のこと”ゆず”って呼ぶようになった。
(すっごい影響力…)
それから、自分のことも名前で呼んでって言うから私も”洋平くん”って呼ぶようになった。
あまり男の子のこと名前で呼んだことないけど、みんなも洋平くんのこと名前で呼んでるからあまり抵抗ない。
「ゆず、大丈夫?痩せたよね。やつれた?」
「ご飯食べれなかったから」
洋平くんも人の変化によく気がつく。
(高遠くんみたい…)
いかんいかん。
高遠くんのことは考えないようにしなくちゃ。
精神的にしんどくなる…。