その背中、抱きしめて 【下】
お昼休み。
さくらちゃんを含めた近くの席の子たちでお弁当のあとワイワイ盛り上がってたら
「ゆずー。イケメンのお客さーん」
ってドアのところから呼ばれた。
イケメンのお客さん?
声の方を見ると、同じクラスの女の子が手をヒラヒラ振っていて、その隣には相川くんと桜井くん。
席を立ってドアのところまで小走りで行く。
「どうしたの?3年の階なんて来づらかったでしょ」
「今日、大会前のバド部が体育館使うことになったみたいで、急に部活休みになりました」
桜井くんがちょっと複雑な表情で教えてくれる。
「あ、そうなの?」
「ホッとしました?」
相川くんが心配そうに私の顔を覗き込む。
「…うん、正直なところ」
この子たちに嘘をつく必要はない。
年下だけど、私の感情を受け止めてくれるから。
「ゆず先輩、明日ずっと俺のトス練の相手してくださいよ」
桜井くんがニッと笑った。
「外コート空いてるらしいです。顧問と監督に了解取ってあります」
相川くんも得意げに笑った。
(あ…)
この子たち、私を高遠くんと内村さんから遠ざけようとしてくれてるんだ。
わざわざ外コートを使うのを顧問と監督に承諾もらって。
「桜井くん、正セッターの座を早く取ろうね」
「インハイには正セッターですよ」
桜井くんがVサインした。