その背中、抱きしめて 【下】
(こういうの…優柔不断って言うのかな…)
ドキドキするのは高遠くんにだけだと思ってた。
洋平くんはただのクラスメイトなのに。
「ゆず?どした?」
洋平くんに顔を覗き込まれてドキっとする。
「ううん。ちょっとぼーっとしちゃって。まだ本調子じゃないのかな」
慌てて言い訳する。
(だって、洋平くん距離が近いんだもん)
女の子に慣れてるからかな。
だから、こうやって話したりするのも近くに寄るのかな。
私、こういうの免疫ないからなぁ。
慣れなくてドキドキしちゃう。
「…ゆずって彼氏いるのにあんま男慣れしてないよな」
洋平くんがふっと笑う。
「こうやって男と2人きりになるのも緊張しちゃう?」
コクってうなずく。
慣れてないもん。
「ぷっ。ゆず、何でそんなにいちいち可愛いの?襲われたいの?」
「なっ…!」
襲うって!?
襲われるって!?
「ウソウソ。男慣れしてないんだったら、俺で慣れなよ。俺だったら話しやすいしいいでしょ?…って自分で言ってみるんだけど」
洋平くんが自分を指さして笑う。
洋平くんは話しやすい。
誰に対しても明るくて優しい。
「じゃあそうしようかな」
笑ってそう言うと
「契約成立」
って笑顔を返された。