その背中、抱きしめて 【下】
洋平くんが私の歩くスピードに合わせてくれて、ゆっくり駅まで向かう。
涙はほとんど止まったけど、時々”ひっく…ひっく”ってしゃくりあげてしまう。
(このまま電車乗るの恥ずかしいな…早く止まんないかな)
「ゆず、『ひっく』ってなんのカワイイね」
洋平くんが優しく笑う。
「こ、子供みたいで恥ずかしいよ…」
洋平くんは女の子の扱いに慣れてるから、”カワイイ”とか平気で言う。
「かわいいよ、ゆずは」
もう一度、洋平くんが優しく笑った。
「あの、さっきはごめんね。取り乱しちゃって…」
「気にしてないよ。あれはマジで辛かったと思うし。俺でよければいつでも胸貸しちゃるから。気を付けて帰れよ」
駅の改札を通って、反対方向の洋平くんとバイバイした。
ひとつ大きく深呼吸をしてホームへのエスカレーターに乗る。
(あ、しゃっくり止まってきたかも)
大泣きの後はいつもこうだ。
しかも学校で、よりによって男の人の胸を借りて大泣きしちゃうなんて…。
「はぁ…」
大きなため息が出た。
ホームがだんだん近づいて、エスカレーターを降りる準備のために少し上を向く。
その視線の先に釘付けになって、息をするのを忘れる。