その背中、抱きしめて 【下】



「…内村さんはどうするの?」


二股とかありえないから。


「あいつは関係ないよ」

「関係ないわけないでしょっ?高遠くんがあの子に靡いたんじゃん」


それで私から離れて行ったんじゃん。

なのに、あっちにフラフラこっちにフラフラとか許せって言ったって無理。



「靡くとか何。何言ってんの?」

高遠くんの声のトーンがまた下がる。

怒ってる時ほど低くて静かなゆっくりした口調になることを知った。


怖くて体が強張る。

でも、言わなくちゃ。

こんなに辛い思いしてるのに。

高遠くんのフラフラにこれ以上付き合うわけにはいかない。



「私じゃなくて内村さんを選んだじゃん。毎日一緒に登下校して、腕なんか組んじゃって。しかもかわいそうに、相川くんと桜井くんに私の世話押し付けてさ」


高遠くんは言い返してこない。

何も言わない。


(何で何も言い返してこないの?)


「それに私、内村さんに『柚香先輩』って呼ばれたくない!親しくなんかないのに名前で呼ばせないでよ!相川くんと桜井くんにはそう呼ばせなかったくせに、何で内村さんには呼ばせるの!?よっぽど2人に名前で呼ばれた方がいい!内村さんと付き合うなら、もう私のことはほっといて!関わらないで!」


涙声で一気にまくし立てた。

顔はもう涙でぐちゃぐちゃ。

でももうどうでもいい。

どうにでもなれ。



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