冷徹社長が溺愛キス!?
ふと、速水社長が私の社員証を見て、一瞬だけ目を見張る。
そして、もう一度私を見て顔をしかめた。
……な、なんだろう。
何か私の良くない噂でも社長の耳に入っているんだろうか。
たとえば、総務部長から『あまりにもトロくて使えない』との報告を受けているとか。
それで、『あぁ、噂の雨宮か』だったらどうしよう。
「なに、どうかしたの?」
三木専務に声を掛けられて、社長は「いや」と首を横に振った。
「この雨宮奈知が、ここを花屋と勘違いしてるから注意していただけだ」
いくら鈍い私でも、さすがにここを花屋だとは……。
そう思ったものの、それを言い返す勇気はもちろんない。
「まぁ綺麗な花。ガーベラは私も好き」
三木専務は私が持っていたトレーからガーベラを一本手に取った。
「これ、どこかに飾るの?」
「はい……」