冷徹社長が溺愛キス!?

「あれは宿題だ」

「……あれ、ですか?」


何のことかと首を傾げると、社長の顔がにわかに曇る。


「しりとりだ」


ムッとした口調で言われて、ようやく思い出した。

なんの言葉で終わったんだっけ……?
えーっと……。

頼りない記憶を辿っていると、社長から大きな溜息が漏れ聞こえた。


「“アキレス”の次だ。花の咲いてる頭でよーく考えておけ」


言い終わるなり、社長は自分で閉ボタンを押して扉を閉めた。

エレベーターが上がって行く様子を表示パネルでぼんやりと眺める。

アキレスの次だと……“す”で始まって“き”が入る言葉だ。
うーん……なんだろう……。

あのしりとりが続いていたとは思いもせず、花が咲いていると言われた頭で考える。


「ねぇ、奈知」


先に行ったとばかり思っていた麻里ちゃんが、私のすぐうしろから意味深な言い方で呼んだ。

< 105 / 272 >

この作品をシェア

pagetop