冷徹社長が溺愛キス!?
「奈知は、しっかり前を見て歩くこと」
「……はい」
これからは気をつけよう。
「会議室の承認があるから急ごう」
水がこぼれてしまった一輪挿しを一旦給湯室に置き去りにし、総務部へと急いだ。
ここピュアネットジャパンは、駅からほど近いオフィス街にある、二十階建ての大きなビルの十階から二十階までのフロアを借りている。
従業員数は四百人ほど。
十階に受付があり、私の所属する総務部は十一階にある。
同じフロアにほかの部署はなく、会議室やミーティングルームが配置されている。
私が担当している仕事のひとつに、各部で開催する会議やミーティングの場所の承認があった。
メールで私宛に送られてきた会議申請で、場所や時間がかち合っていないかを確認し、よければ承認メールを送る。
そして、その時間前に会議室やミーティングルームを開錠しておくのだ。
勝手に部屋を使うことはできない決まりになっている。
給湯室から左に折れ、麻里ちゃんの背中を追って向かった総務部内の私のデスクには、腕組みをして立つ人物がひとりいた。
「加藤くん、おはよう」
それは私たちの同期、加藤くんだった。