冷徹社長が溺愛キス!?
まさかすぐうしろに加藤くんが控えているとは思いもしなくて、驚いて「ひゃっ」と声を上げてしまった。
私を急かすために尾行していたようだ。
「僕が痴漢みたいな悲鳴を上げるのは勘弁していただけませんか。とにかく急いでください。社長を待たせてしまいます」
「しゃ、社長……?」
「そうです。これから社長に試作のゲームを見ていただくんです」
さっき社長が三木専務と一緒に向かったプレゼンは、加藤くん主催のものだったのだ。
これは本当に急がないと大変。
加藤くんにせっつかれるようにして小走りで会議室Cへ向かうと、ドアの前で待つ数名の中に速水社長の姿が見えた。
そのせいでさらに気持ちが焦る。
本当にノロマなヤツだと思われるのは避けたい。
「お待たせして申し訳ありません!」
ドアの前に到着したと同時に、ピョコっと頭を下げた。
「……またお前か」
私の顔を見た社長が、品定めでもするかのように目を細める。
「花屋ごっこなんかしている場合じゃなかったようだな」