冷徹社長が溺愛キス!?
◇◇◇
その日のお昼休み。
十階にある休憩室で、持ってきたお弁当を麻里ちゃんと向かい合ったテーブルに広げた。
社員食堂がないうちの会社は、従業員はお弁当を持参してここで食べるか、外食するしかない。
中には愛妻弁当の人もいるが、男性社員のほとんどは外へ出る人が多く、女性社員は、三分の一ほどがここを使っている。
六人掛けテーブルが十個ほど並んだ休憩室は、十二時になるとだいたい埋まる。
この休憩室の嬉しい点は、三つある自動販売機の飲み物が無料で飲めること。
私はカップに入ったホットココア、麻里ちゃんはブラックコーヒーを飲むことが多い。
「はぁ……」
思わず私が吐いた溜息に、麻里ちゃんが「どうかしたの?」と顔を上げる。
そしてすぐさま、「もしかして今朝のこと?」と尋ねた。
「うん……。スーツを濡らした上、会議室の前で待たせちゃったから……」
一度ならず二度も、立て続けに失態に立ち会われてしまった。
しかも速水社長に。
「私も、さすがに社長に水を掛けちゃうとは思わなかった」
麻里ちゃんが深刻な顔をするから、さらに不安になる。