冷徹社長が溺愛キス!?
「何やってんだよ。入れ」
「は、はい」
言われて、社長が押さえてくれたドアから中へ滑り込んだ。
すぐに香ばしい匂いに包まれる。
そして、奥から出てきた人物に驚かされた。
「あら、いらっしゃい、純ちゃん。今日はなっちゃんも一緒なの?」
福子さんだったのだ。
山で遭難しかけた翌日、別荘で私たちをもてなしてくれた、あの久万さんの奥さんだ。
ニコニコと私たちを出迎えてくれた。
「この前は、大変お世話になりました。福子さん、パン屋さんをやっていらしたんですね」
社長はいつも、ここでパンを買っていたみたいだ。
それならそうと社長も、『今から福子さんの店に行くぞ』とでも言ってくれればよかったのに。
「そうなのよ。気まぐれに不定期営業なんだけどね」
「今日はツイてるぞ」
社長は私に向けて言った。
ということは、滅多に営業していないということなんだろうか。