冷徹社長が溺愛キス!?
御主人の久万さんの姿は見えない。
ひとりでここを切り盛りしているのか、ほかの従業員らしき人も見えなかった。
広いとは言えない店内の片隅にひとつだけテーブル席があって、社長は袋に入れてもらったパンを持ち、そこへ座った。
「奈知も座れ」
ここで食べて行くつもりらしい。
どうりで、随分早くマンションを出ると思ったのだ。
朝食も抜きだったから、社長はいつもそういうスタイルなのだとばかり思っていた。
向かいに腰を下ろすと、社長は大袋の中から小分けにされたメロンパンを手渡してくれた。
「ありがとうございます」
それからすぐ、福子さんがトレーにカップをふたつ載せて現れた。
「はい、お待ちどうさま」
それぞれの前にひとつずつ置く。
「これは……?」
「ココアよ。ここで食べるとき、純ちゃんはいつもこれ」
「そうなんですか」