冷徹社長が溺愛キス!?
私が勝手に三木専務という恋人の存在を明かしていいものかどうか迷って、助けを求めるつもりで彼を見たのに、新聞を広げて読み始めてしまった。
「今度またふたりで別荘にいらっしゃい。前もって言ってくれれば、ふたりだけで泊まってくれてもいいからね」
「あ、いえ、違うんです、ほんとに」
私ひとりで誤解を解くことに必死になる。
絶対に聞こえているのに、社長ときたらまったく素知らぬ顔だ。
社長だって、恋人がちゃんといるのに、私との仲を誤解されたら困るだろうに。
昨夜は不可抗力だから仕方のないこととしても、ふたりだけで別荘に泊まるなんてとんでもない。
うっかり浮かんだ、別荘でのふたりきりのシーンを慌てて頭から追い出す。
福子さんが変なことを言うから、心臓までドキドキしてきた。
それを忘れようと、メロンパンを頬張る。
……美味しい。
口の中いっぱいに広がる甘い香り。
パリパリとした表面は、この前、山で社長から分けてもらって食べたときより、ずっと香ばしかった。
さすがは焼き立て。
「ほんとに美味しい」
ポツリと呟くと、社長が広げていた新聞を下げて、目から上だけ覗かせる。
「だろ」
とっても得意気だ。
「店に並べればすぐに売れちゃうし、店は不定期営業だし、幻のメロンパンなんだ」
「私、本当にラッキーなんですね」
「そういうことになるな」
次はたぶんないだろうから、今日の幸運を大切にしよう。
ひとつ目を平らげ、ふたつ目を頬張ると、社長はやけに嬉しそうに笑った。