冷徹社長が溺愛キス!?
要注意人物の暴走
電車を降り、会社までは徒歩で七分。
ちょうどみんなが出勤する時間帯ということもあって、ちらほらと見える同じ会社の人を見つけては、ビクビクしてしまう。
社長と並んで歩くわけにもいかなくて、徐々に歩くスピードを落としていると、社長がおもむろに振り返った。
「おい、遅刻したいのか」
私の気遣いもお構いなし。
社長は普通の声のトーンで私に言い放った。
その様子で社長に気づいた社員が数人、私たちを好奇な目で見比べながら、「社長、おはようございます」と言いつつ、追い越して行く。
「いえ、そういうわけでは……」
「なら早く歩け」
どうして私の気持ちを汲んでくれないんだろう。
単なる事務員の私が社長と仲良く並んで出社なんて、どう考えたっておかしい光景なのに。
三木専務にでも見られたら、気を悪くするに違いない。
しかも、さっきパン屋さんを出たときに社長から「やる」と手渡された袋は、社長もお揃いで提げているのだ。
かといって、「先に行ってください」と強気な発言もできない。
社長に素直に従うしかなかった。