冷徹社長が溺愛キス!?
なんとなく居心地が悪いのは、私に向けられる社員の視線が、“なんで社長と一緒にいるの?”と言っているように見えるせいだ。
早く会社に着くことを祈るしかできなかった。
「おはよ」
うしろから声を掛けてきた麻里ちゃんは、私の隣に社長がいることに気づいてハッとする。
「お、おはようございます」
社長にも挨拶をすると、麻里ちゃんは私の腕をグイと引っ張った。
その目が『どういうこと?』と言っている。
早足の社長と少しずつ距離が開いていったものの、彼もそれ以上、急かしてきたりはしなかった。
「桐谷さんは?」
昨夜、麻里ちゃんの部屋に泊まったのなら、一緒に出勤してきてもおかしくないのに、姿が見えなかったのだ。
「急ぎの仕事があるから先に行ったの。それより、どうして社長と並んで出社なんて? あれ? 昨日と同じ洋服じゃない?」
麻里ちゃんはひと際大きく目を見開いたあと、社長のうしろ姿と私を何度も見比べた。