冷徹社長が溺愛キス!?

「うーん……」

「朝っぱらから何事ですか」


答えに窮していると、加藤くんが颯爽と登場した。
いつものようにメガネのふちを指先で持ち上げ、私に冷ややかな目を向ける。


「同じ会社の人間として、歩道で大騒ぎなんて恥ずかしい限りですね」

「……はい、すみません」


謝る私とは反対に、麻里ちゃんは「だって、興奮せずにいられないことがあったんだもん」と開き直る。


「沢木隊員、やはり完全に雨宮さんの毒に侵されているようですね。もう手遅れかもしれません。ご愁傷様です」


加藤くんは淡々と言いたいことだけを告げて、私たちを追い越して行った。
そのあとから現れた三木専務に、妙な緊張が走る。


「おはようございます」


麻里ちゃんと揃って頭を下げた。


「おはよう。早くしないと遅刻になっちゃうわよ」


ふんわりと甘い香りを漂わせて、三木専務も足早にビルに吸い込まれていく。

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