冷徹社長が溺愛キス!?
「なっちゃんがひどい目に遭ったから、急いでカミさんに焼いてもらったよ」
「おっ、メロンパンじゃないですか」
私が受け取った袋に、社長が横から手を入れる。
「純ちゃん、だめだよ、これはなっちゃんに持ってきたものなんだ」
「奈知のものは俺のものだ。なぁ、奈知」
「え? ……あ、はい……」
久万さんにピシャリと言われてもなんのその。
社長は、取り出すなりメロンパンを頬張った。
私がダメだと言えるはずがない。
「まったく純ちゃんときたら。そんなんじゃ、なっちゃんに嫌われるぞ」
久万さんのセリフに、社長の動きがピタリと止まる。
そして、メロンパンにかぶりついたまま、私を見た。
さっき、告白まがいのことを言ってしまった手前、恥ずかしさが込み上げる。
社長から視線をサッと外した。
「く、久万さん、好きも嫌いもないですから。あ、あの、福子さん、お元気ですか?」
何の脈絡もないことを言ってみる。
とにかく、何かで誤魔化したかった。
「ん? あぁ元気だよ。またパン屋のほうにもふたりでおいでって言ってたな。朝飯食べにふたりで行ったんだって?」
「……あ、は……い……」
話が余計にまずいほうへいってしまった。
久万さんは、私たちのことをすっかり誤解してしまっているようだ。
社長も社長だ。
訂正すればいいのに、素知らぬ顔でメロンパンを食べ続けていたのだった。