冷徹社長が溺愛キス!?
◇◇◇
「もー! 驚かさないでよ、奈知ってば!」
会社に帰るなり、留守組だった麻里ちゃんに叱られたのは言うまでもない。
私の両腕を掴んで、よく通る声を総務部中に響かせた。
おかげで、「さすがは雨宮だ」とクスクス笑われるはめに。
「本当にごめんね」
彼女によると、私が襲われて倒れたという一報を受けたときには、すぐにでも駆けつけようと思ったらしいが、無傷だと知って大人しく会社で私の帰りを待っていたようだ。
「刺されたと思って失神するなんて、奈知らしいというかなんというか」
ほかの総務部のメンバーまで「うんうん」なんて頷く。
私がみんなの視線を集めるときは、どうも笑い話ばかりだ。
「まぁまぁ沢木さん、そう雨宮さんを責めないであげてください」
部長が宥めるかたちで悠々と登場する。
「雨宮さんは、捨て身で社長を守ったんですから。極度の緊張で倒れても仕方ありません。無事で何よりですよ」