冷徹社長が溺愛キス!?

部長は、ポンと私の肩に優しく手を置いた。


「それに、園田さん不在の中、議決権の集計の手際も良かったですし、受付の応対もなかなかでしたから」

「部長……ありがとうございます」

「これはこれは、噂の雨宮さんではありませんか」


ありがたい言葉に涙が出そうになったところで、加藤くんがファイル片手に総務部へ入って来た。


「お話は聞きましたよ。暴漢から社長を守ったまでは素晴らしいことですが、刺されてもいないのに失神したそうですね。社内ではその話でもちきりですよ」


メガネの奥の目を細めて私を見る。
せっかく部長がうまく話をまとめてくれたのに、加藤くんときたらちょっとひどい。


「まぁ、何事もなくて良かったですけどね」

「加藤くーん、本当は奈知のことが心配で駆けつけたんでしょう」


麻里ちゃんが、加藤くんを肘で小突く。


「はぁ? 相変わらず妙な言いがかりをいいますね、沢木隊員は。僕は、会議室の予約メールがなかなか開封されないから、雨宮さんに催促にきたまでです」


早口で事務的に言う。

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