冷徹社長が溺愛キス!?
お見合い写真の衝撃的事実


波乱の株主総会から二週間が過ぎようとしていた、七月の初め。
夏本番を前に、暑さを苦手とする私も梅雨明けを心待ちにしていた。

告白まがいのことをしてからというもの、三木専務への花を届けることはもちろんのこと、最上階のフロアへ行くことも避けている。
どんな顔をして会えばいいのか分からなくて、社内で遠くに社長の姿が見えれば、くるりと方向転換。
自分でもかなりの挙動不審だと思う。

しりとりに乗じて“好き”と言ってしまったことは、相手が社長だけに、私の人生史上まれにみる暴挙だった。
暴漢事件の興奮がもたらした、私の言動の誤作動にほかならない。

幾度となく溜息を吐いたところで、心のモヤモヤはすっきり晴れ渡ることはない。
まるで私を映す鏡のような梅雨空を見上げ、傘を差して会社を出た。
取引先へのお中元を手配するために、デパートへと行くためだ。

チェックを入れたカタログと申込用紙を大きめの封筒に入れ、雨に濡れないように抱えて歩いているときだった。
私の数十メートル先に一台のタクシーが停まる。

それをなんとなく見ていると、そこから降り立った人の姿に私は立ち止まった。
社長だったのだ。

傘を差さずに、手をかざして雨を防ごうとしている。
もちろん、私に気づく気配はない。

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