冷徹社長が溺愛キス!?
「おーい、純」
言いかけた言葉は、社長のお父様の声にかき消されてしまった。
振り仰ぐと、両家の両親が広縁から私たちに大きく手を振っていた。
社長は私の頭をポンと撫で、そちらへ向かって歩き出した。
「雨宮さんご夫妻が帰られるそうだ」
そういうわけで私たちを呼び寄せたのだ。
「そうですか。本日はありがとうございました」
社長が私の両親に頭を下げる隣で、私は草履を脱ごうと小上がりに足を掛ける。
「それなら私も一緒に」
「奈知さんは、うちの純が送っていくから心配なさらなくていいですよ」
「そうよ。せっかくだから、ふたりでゆっくり話してらっしゃい」
社長のお父様の言葉に甘える形で、お母さんが頷く。
社長を見ると、「そうしろ」という目で頷いた。
その目に絆されそうになりながら、意思をしっかり立て直す。