冷徹社長が溺愛キス!?
加藤くんは、『はぁ?』と眉間に皺を寄せて、嫌なものでも見るような目で私を睨んだ。
「妻が専務なんですよ? 僕はまだ何ひとつ肩書を持っていない。そんな格好の悪いことがありますか」
声を潜めて加藤くんが言う。
「でも、容姿端麗で仕事もできる女性を口説き落としたのは、紛れもなく加藤くんなんだから、自信を持てばいいのに」
「いいえ。まだです。僕が登りつめるまでは。今に見ていてくださいよ。僕も取締役になってみせますから」
鼻息荒く、私に宣言する。
そして、口いっぱいに肉じゃがを詰め込んだところで、麻里ちゃんがカップを片手に舞い戻った。
「はい、アイスコーヒー」
「ありがとうございます」
加藤くんが口をモゴモゴさせながら頭を軽く下げる。
玉子焼きを早速口に入れた麻里ちゃんは、「なにこれ! 本当に美味しい!」と満足気だった。
すっかり“そっち”のことは頭から消えたようだ。
「それで、奈知のお見合いはどうだったの?」