冷徹社長が溺愛キス!?

加藤くんは、『はぁ?』と眉間に皺を寄せて、嫌なものでも見るような目で私を睨んだ。


「妻が専務なんですよ? 僕はまだ何ひとつ肩書を持っていない。そんな格好の悪いことがありますか」


声を潜めて加藤くんが言う。


「でも、容姿端麗で仕事もできる女性を口説き落としたのは、紛れもなく加藤くんなんだから、自信を持てばいいのに」

「いいえ。まだです。僕が登りつめるまでは。今に見ていてくださいよ。僕も取締役になってみせますから」


鼻息荒く、私に宣言する。
そして、口いっぱいに肉じゃがを詰め込んだところで、麻里ちゃんがカップを片手に舞い戻った。


「はい、アイスコーヒー」

「ありがとうございます」


加藤くんが口をモゴモゴさせながら頭を軽く下げる。

玉子焼きを早速口に入れた麻里ちゃんは、「なにこれ! 本当に美味しい!」と満足気だった。
すっかり“そっち”のことは頭から消えたようだ。


「それで、奈知のお見合いはどうだったの?」

< 249 / 272 >

この作品をシェア

pagetop