冷徹社長が溺愛キス!?

『そこでね、いい人を見つけてきたから、なっちゃんにどうかなと思って』

「え!?」


呑気に聞いていた私は飛び上がって驚いた。
あまりにも急すぎる。
私が頼んだわけでもないのに。

電話の向こうから、お父さんが『会ってみろって言え』という恐ろしい指図が聞こえてきた。


『会うだけでもいいから、一度会ってみたら?』


お母さんが伝言ゲームのごとく私に伝える。


「お見合いはしないってば」


結婚する気もないのに会うなんて、相手に失礼だ。

それに、今は彼氏がいないけど、いつ何時できるとも知れない。
お見合いがダメだとは言わないけど、きちんと恋愛段階を踏んで、お互いに相思相愛で結婚したい。
それくらいの夢、私だって持っていたっていいんじゃないだろうか。


『ともかく、近いうちに帰ってきたら? お正月以来なんだし』

「うーん……ゴールデンウィーク中に帰れたら帰ろうかな」


そうでも言っておかないと、いつまでもこの電話を切れそうになかった。


『本当に? それじゃ、なっちゃんの好物作って待ってるから』

「うん、ありがと」


そうしてようやく私は、お見合いの包囲網からひとまず脱することができたのだった。

< 27 / 272 >

この作品をシェア

pagetop