冷徹社長が溺愛キス!?
◇◇◇
「おはようございます。総務部の雨宮です」
一礼して顔を上げると、いったい何の用事だろうかと三木専務の秘書は「おはようございます」と挨拶を返しながら首を傾げた。
取締役の部屋がずらりと並ぶ最上階のフロアは、新入社員の研修中に見学がてらに案内してもらって以来だった。
ふかふかの絨毯の敷かれたそこは階下とは違い、どことなく緊張感のある空気に包まれている。
「三木専務にこちらをお持ちしました」
ガーベラを五輪挿した二本の花瓶のうち、一本を差し出す。
今日は昨日のような失態を犯して始業時間が過ぎてしまわないように、二十分早く出勤した。
また社長に見つかって、咎められたくはない。
「……専務に、ですか?」
「はい、昨日――」
「あら、さっそく持って来てくれたの?」
秘書とやり取りしている最中に、私のうしろからタイミングよく三木専務が現れた。
「まぁ可愛らしい」
手にしていたファイルを秘書に預けると、私から花瓶を両手で受け取ってくれた。