冷徹社長が溺愛キス!?
私も彼女と同じようにしたら少しはテンポが速くなるかもしれないと、一度はショートカットにしてみたものの、期待は儚く崩れその気配はまったくなし。
それ以来すっぱり諦めて、肩より少し長いくらいに落ち着いている。
この麻里ちゃんに関する何よりの重要ポイントは、しっかり者だということ。
私たちは、オンラインゲームの開発会社【ピュアネットジャパン】に同じ年に入社。
今年の春で勤続丸五年になったばかり。
麻里ちゃんとの仲は、入社数ヶ月前から定期的にあった内定者懇談会で親しくなって以来だ。
それからは何かにつけて私の手助けをしてくれる、私のよき理解者であり、姉のような存在である。
麻里ちゃんにとっては災難だったかもしれないが、同じ総務部に配属されたのは、私にとって何よりの幸いだった。
「会議室予約の承認待ちメールがたくさん届いてるから、早く返信してあげたほうがいいよ。さっき、まだ返事がこないって催促の内線が入ったから」
「わわ、それは大変」
急がないと。
棚からトレーを出して、その上に一輪挿しを載せる。
「そのガーベラも、奈知作?」
「うん。今年やっと咲いてくれたの」
悠長に麻里ちゃんに笑いかけると、「早く行こうよ」と急かされてしまった。