冷徹社長が溺愛キス!?
「ダメかも」
麻里ちゃんはそう言うと、桐谷さんの腕にしがみついた。
普段は私に甘えられてばかりだから、そうしてほかの人に甘える姿はなんだか可愛らしい。
桐谷さんは、「ほら」と言って麻里ちゃんと手をつなぐと、並んで歩き出した。
なんだかいいな。
仲良くて羨ましい。
ずんずん進むふたりの背中を眺める。
「奈知も早くおいでー」
ついさっきまで『頂上はまだ?』と生気を失っていた彼女とは別人だ。
足取りも軽く、桐谷さんと振り返って私に手招きをする。
「私はのんびり花を見ながら行くから大丈夫だよー」
ほかにも人はたくさん歩いてるし。
ひとりになっても大丈夫。
麻里ちゃんと桐谷さんに手を振ると、リュックからデジカメを取り出した。
あっ、ヒレアザミだ。
さっそく可愛らしい花を見つけた。
立ち止まって写真撮影。
あ、こっちにはフデリンドウも咲いてる。
やっぱり春の山は楽しい。
歩けば歩くほど、いろんな花が出迎えてくれる。