冷徹社長が溺愛キス!?
花の栽培は、私の趣味である。
ひとり暮らしをしているアパートのベランダは、この季節が一番賑やかになる。
四畳ほどのスペースは、色とりどりの花でいっぱいだ。
種から育てたガーベラが今年念願の花を咲かせてくれたこともあって、毎朝の水やりがとても楽しい。
たくさん咲いた花たちを私の部屋だけで鑑賞するのはもったいないと、麻里ちゃんの勧めもあって、こうしてたまに会社に持参してきていた。
殺風景な総務部のデスクに飾ると、それだけでちょっと華やいだ気分になれる。
満員の電車に揺られること三十分。
項垂れかけた花弁は、水を与えることで生気を取り戻してくれた。
八つの一輪挿しを並べたところで、トレーを持ち上げる。
私の持ち方が悪いのか、トレーが滑りやすい材質なのか、花瓶が一斉にスーッと横滑りを始めた。
――おっとっと。
傾き加減をなんとかうまく調整して、花たちがピタリと止まる。
……ふぅ、なんとかセーフ。
「危なっかしいから私が持つよ」
歩き出した私の背中に麻里ちゃんが声を掛ける。
「ううん、大丈夫だよ。ありがと、麻里ちゃん」