冷徹社長が溺愛キス!?
「花と戯れる時間があるなら、斬新なゲームのアイディアでも出したらどうだ」
妙な抑揚をつけた機械的な言葉が、後頭部付近に浴びせられた。
「……はい」
さらに深く頭を下げる。
その拍子にトレーが傾きかけるものだから、また焦ってしまった。
斬新なゲームのアイディア。
それができるものならいいものの、ちょっと難しい課題だ。
麻里ちゃんも私も、所属は管理系の総務部。
クリエイティブ系に所属するプログラマーでもディレクターでもないのだから。
速水社長は、私たちがどういったことを担当しているのか知らないのだ。
頭を下げたまま麻里ちゃんとこっそり困り顔を見合わせた。
「あらあら何事? 朝からいたいけな女の子をいじめて遊んでるの? そんなんだから女子社員たちから怖がられちゃうのよ」
聞こえてきた声に顔を上げる。
三木加恋(みき かれん)専務だった。
目鼻立ちははっきりとし、手足の長いモデルスタイル。
百八十センチはあるだろう社長と並んでも、頭ひとつ分と違わない。
ヒールの高さを差し引いても百七十センチ近くはありそうだ。