冷徹社長が溺愛キス!?
◇◇◇
「いやぁ、大変な目に遭ったねぇ、純ちゃん」
下山した私たちを迎えてくれた人は、社長を“純ちゃん”と呼ぶ男の人だった。
歳は四十代後半くらい。
社長と変わらない背丈を見ると、百八十センチはありそうだ。
丸々とした体型が、社長よりもずっと大柄に見せる。
ニット帽を目深に被り、顎ひげと口ひげを生やしていた。
クリッとした小さな目を細めて、社長の肩をトントンする。
「本当に参りましたよ。でも、くまさんがいてくれて助かりました」
――くまさん? あだ名?
あまりにも見た目に合致した呼び方に、目を瞬かせた。
「奈知、こちらはくまさんだ」
「……はい」
ワンテンポ遅れて頷いてみせると、私の反応にピンときたらしい“くまさん”は豪快に笑い出した。
「久しいという漢字に、一万円の万。それで“久万”っていうんだよ」
彼は笑いながら話してくれた。