冷徹社長が溺愛キス!?
「……名字だったんですか」
「見たまんまの名前で驚いたかい?」
「あ、いえ……」
頷くわけにはいかない。
「いや、いいんだよ。アハハ」
尚も豪快に笑う。
とても感じのいい人だった。
「それで、ふたりともどこも怪我はないかい?」
「はい。大丈夫です」
私が答えると、「未遂はあったんですけどね。どっかのドアホが急斜面を転げ落ちたかったらしくて」と社長が余計な報告をする。
意地悪な顔で私を見た。
転げ落ちたかったわけでは決してないが、言い返す立場じゃないだけにぐっと堪える。
すると、久万さんはまたハハッと笑った。
「おいおい、純ちゃん、いくら可愛いからって、そんなにいじめちゃダメだよ」
「可愛い? 久万さんはこういうタイプが好みですか」
社長は私をいつもの下等動物でも見るような目で見たあと、久万さんに怪訝そうに尋ねた。