冷徹社長が溺愛キス!?
「あの、もしかして、『クマに食われていたかも』っていうのは、久万さんのことだったんですか?」
山小屋でクマが出ると言っていた社長の言葉を思い出した。
声を落とさなくても、きっと久万さんには聞こえない。
変わらず夢中で歌っていた。
「よく気づいたな。奈知にしては上出来だ」
社長がフンと鼻先で笑う。
誉められたのか、けなされたのか。
「この山にクマは生息してない」
「そうだったんですね」
私が見かけたような気がした朽ち果てた看板も、きっと別のことが書かれていたんだろう。
私をクマで脅すなんて、社長も人が悪い。
チラッと横目で見た彼は、してやったりという顔をしていた。