冷徹社長が溺愛キス!?
ワンレンボブの黒髪を片耳に掛け、いつでも背筋はピンと伸びている。
パンツスーツを彼女以上にカッコよく着こなす女性を私は見たことがない。
社内でも彼女に憧れる女子社員は多く、私もこっそりファンなのだ。
三木専務と速水社長は、同じ大学で学んだ同級生同士。
彼女が社長の右腕的存在なのも、この会社を立ち上げたときから苦楽を共にしてきたからこそらしい。
速水社長がオンラインゲームの開発を手掛ける会社を立ち上げたのは、今から十年前のこと。
なんと、ふたりが大学生のときだというから驚いてしまう。
三十二歳という若い社長だが、IT業界では珍しいこともないみたいだ。
五年前に一部上場して、着実に業績を伸ばしている。
ふたりは恋人同士という噂もあって、こうして並んだ姿を見ると、本当に絵になるふたりだと思う。
「別に怖がらせてるつもりはないぞ」
「あらそう?」
憮然と返す社長に三木専務が小首を傾げた。
「でも、水も滴るなんとやらってところね」
「好きで滴ったわけじゃない」
社長は、不愉快極まりないといった様子だ。
本当に申し訳ない気持ちになる。