冷徹社長が溺愛キス!?

「いらっしゃい、純ちゃん」

「今日は本当に助かりました」

「ほんとよね。私たちがちょうどこっちにいたからよかったわ。久万福子(くま ふくこ)です。よろしくね」


“福子”
見た目そのものの名前には、久万さんに引き続き驚かされた。
奥さんと思われる女性は社長に言ったあと、私に向かって優しく微笑むから、ボケッと見ていた表情を引き締める。


「私は雨宮奈知と申します。速水社長の会社で働かせていただいています」

「働きっぷりはイマイチだけどな」


私の自己紹介に、社長が失礼なひとことを追加した。
イマイチなことは否めない。


「まぁ、純ちゃん。そんなこと言ったら可哀想よ」

「あ、いえっ……本当のことなので……」


初対面の人に庇ってもらったことで、恥ずかしさに小さくなる。

花にかまけて、花瓶の水を社長に掛けてしまったし、会議室の開錠で待たせてしまったし。
入社して初めて社長と直接接触したときに大失敗をしでかすなんて。
普段からそうだと思われて当然だ。

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