冷徹社長が溺愛キス!?
“あれ”って何だろう。
「ごめんね、純ちゃん。焼いてないから、別ので我慢して」
「それは残念。んじゃ、このベーグルでもいくか。ほれ、奈知も食え」
「んぐっ……」
社長の隣に腰を下ろそうとしたところで、メロンパンのとき同様にベーグルを唇に強く押し当てられた。
目を白黒させたものの、なんとか口を開く。
……ん? 美味しい!
ひとくち食べると、もっちりとした触感が口の中に広がった。
私が食べたことのあるベーグルは、もっとパサパサとしているし硬い。
「いつまで俺に持たせる気だよ」
味を堪能していると、社長のジトッと湿気を含んだ目と合った。
「――ふ、ふみまへん!」
慌ててベーグルを自分の手で持ち、社長に頭を下げる。
「純ちゃん、女の子にはもっと優しくしてあげなきゃ」
福子さんにたしなめられても、まったく意に介さず。
社長は悪びれる様子もない。