アメトムチ。
「あの・・ありがとうございました」
「まあいいけどさ。あんた、これからどうするんだ?」
「どうするって・・・帰ります」
「あ、そう」と言った彼は、なぜかクスッと笑った。

「それじゃあ」
「あー、ちょっと待った」
「はい?」
「家まで送ろうか」
「いえいえっ。ホントに結構です」
「あ、そう・・・まあ男ってのはさ、俺みたいなヤツばっかじゃないから。悪いオオカミや野獣キャラには気をつけろよ」
「あ・・・はい」
「でもあんた、恋愛経験値ゼロの割に、男を見る目はある。なんてったってこの俺を誘ったんだからさ。自信持てよ」
「は・・・あ、はい。ありがとうございます」

この人って・・・究極的なポジティブ主義者?それとも自己愛が強い楽観主義者?
まぁ、おかげで沈みかけてた私の気持ちが、ちょっとだけ上向いた気がするから、どっちでもいいけど。
とにかく、この人とはもう、二度と会わないんだから。

「それじゃあ」

今度こそ、さようなら。
と思っていたのに。
彼に一礼して踵を返し、2・3歩歩いたそのとき、手を掴まれた。

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