アメトムチ。
「のの、原と知り合いか?」
「う~ん・・ま、そうっすね」

・・・あぁ、彼がなんとなくでもごまかしてくれて良かったと思ったのに。
続けて「原さんっていうんだ」と小声で呟いた彼の声がバッチリ聞こえて、私はつい顔を上げた。

(それ以上何も言わないで!)と訴える眼差しに、彼はただ、ニヤニヤして応えるだけ。
でもその顔は、(おまえ次第だ)とハッキリ言ってるような気が・・・。
しかも、メガネの奥にある彼の目が、陰謀の光をギラギラと放っているように見えるし!
うぅ、周りの視線も痛いくらい感じる。
こんな形で(私にとっては)大勢の人たちに注目されることなんて、私は望んでないのに!

「おいのの。今は総務のみんなに挨拶して。原とは後で話せ」
「はーい」
「え。あとって。あ、ちょっとっ」

歩いて行く彼を止めようと、つい伸ばした私の右手は、彼に届かず。
私は、その手をパソコン画面を持つように置いて、虚しく空振りしたのをごまかした。

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