アメトムチ。

「えっと、それで、なぜ野々瀬局長は、ずっと札幌支店勤務だったんですか？大学は北海道の方だったんですか？」
「いいや。大学はこっち。勤務地は自分で選んでいいってオヤジから言われてさ、寒いところだったら篭れるんじゃないかと思って、一番北にあった札幌に決めたんだ」
「はい？こもれる？」
「そ。つまり、オンラインゲームを思いっきり作れる“お篭り環境”がほしかったんだ。俺、寒がりだから」
「あ、あ・・・なるほど・・」

よく分かんないけど・・それくらいの気概がないと、一つの作品は創れないんだろうな。
ヒット作ともなると、なおさら。

そういう環境と、私の隣にいるこの人のイマジネーションから、「エーデルランド」とかが生まれたんだと思うと、その世界が遠くて近いような、ちょっと不思議な気がした。

「じゃあ、なぜ今になって本社に？」と、より子が野々瀬局長に聞いた。
「それは」と野々瀬局長は言うと、私の方を見た。

そして「キミに会いたかったから」と言った。