アメトムチ。
「それで、お話とは」
「まさかキミも“イソノン”の社員だったとはな。マジでビックリした」
「そんなこと話すならもう失礼します」と言って帰ろうとした私の手首を、野々瀬局長が「待って」と言いながら軽く掴んで、すぐ離した。

それでも、その部分がジンジン熱い気がする。
私は頑なに、局長の方を見なかった。

「ちーちゃんは俺のこと知ってたのか?」
「知らないですよ!知ってたら絶対声かけてません!」
「だよなぁ。ちーちゃんってそういう人だと思う。俺・・・あれからさ、ビンビンになったの静めるために、他の女の子とやらなきゃいけなかった」
「ええっ!?」

衝撃的な野々瀬局長の発言に、私はつい、彼の顔を見てしまった。
すると局長は、シリアスな表情から一変、「てのはウソ」と言ってニンマリ笑った。

「な・・」
「やってないよ。欲だけでやる行為はもう卒業したって言ったろ?」
「はぁ・・・」

これって・・・安心していいんだよね・・・?
私は、笑っていいのか分からないような泣きそうな顔で、野々瀬局長を見た。

「ホントはキミのことが忘れられなかった」
「・・・うそ」
「時々忘れたから、まあ、ウソかもな」
「もう!」

何なのよこの人は!
私、この人にふり回されてるとしか思えないんですけど!

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