アメトムチ。
「わ、私の予定とか・・・聞かないわけ?私にだって予定があるとか思わないんですか」
「あぁ・・ちーちゃんはちょっと優柔不断な気があるから強引に攻めようと思ったんだが。拉致系はダメか」
「らちって・・・あなたは・・・私を一体どうするつもり・・・」
「心の準備ってーのは必要だな、うん」
「そうじゃなくって!」

この人、私が言うこと全然聞いてなーいっ!

「で?あるの?予定」
「え」
「仲良しな田辺ちゃんは、もう帰ったよ」
「う・・・んと、お、お買い物、を・・・食材、買わなきゃ・・」

野々瀬局長が急にちゃんと聞いてくれたことに戸惑ってしまって。
食材買うのは事実なんだけど、私は照れながら、口をもごもごさせてしゃべった。
ついでに、この人から見つめられるのも、なんか・・・恥ずかしい。メガネが似合う貴公子だし・・・。

たぶん赤くなってる顔を隠そうと思って俯くと、私の左手と局長の右手が見えた。

繋がれてるというか・・・彼が私の手を掴んでいる、イコール、彼の言うところの「強引な拉致攻め」の形?
でも彼は、跡がつくくらい強く掴んでないし、私はいつでも彼の手を離すことができる。
だけど私は・・・こういう形もいいって思ってる。
この人の手は汗ばんでもなくて、全然不快じゃない感触だし。
と気がついて、胸がドキドキ高鳴った。

もしかしてこれも、“ロマンチック”な形の一つなのかもしれない。

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