アメトムチ。
「食材か。そだなぁ。確かに必要だな。俺んち何もないし」
「え」

つい私が顔を上げた先には、ニンマリした野々瀬局長の顔が見えた。
うっ。この表情を見せられると、私は怒る気を失くしてしまう。

「引っ越してきたばっかだからさ。ちーちゃんおススメのコンビニとかスーパーとか教えてよ」
「えっと・・局長はご両親のご実家にお住まいでは」
「まーさかーあ。35にもなって実家住まいはなぁ。スペースあるけどうざいじゃん。それにもう15年以上ひとり暮らししてるんだ。この自由を手放すなんて今更できないよ」
「そうですね」
「お。納得してるところを見ると、ちーちゃんも実家出てひとり暮らし?」
「あ、はい。実家からの通勤は遠すぎるので」
「あぁそう。会社には車通勤してる?」
「いえ」
「ちょーど良かった。俺、車だから。ハイ乗って」なんて局長と話しているうちに、彼の車の前にたどり着いていた。
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