飛梅ちゃん
あいは、賢人の顔を見ると言った。

「誰がくるの?」

賢人はニヤニヤしながら言う。

「楽しいヤツだよ。」

賢人は、歩いて隣の部屋につながる扉を開ける。

あいは、立ち上がると賢人に言った。

「帰った方が良い?」

聞こえていないのか返事は返ってこない。

隣の部屋から出てきた賢人は、手にビデオカメラを持っていた。

あいは、できるだけ不安を隠しながら言った。

「なにそれ?」

賢人は、無言のままビデオカメラを回しはじめる。

「モデルが良いとカメラも調子が良いじゃん。」

あいは、カメラを回す賢人をジッと見続ける。

賢人はニヤニヤしながら、あいを被写体にしてカメラを回し続ける。

5分ほど沈黙が続く。

賢人は、あいの肩を触りながらソファに座らせる。

あいは、肩を触られてからどんどん不安が募る。

あいは言う。

「賢人…怖いよ…」

あいは、立ち上がると帰ろうと玄関へ向かおうとする。

あいの右手首を賢人が掴み、無理矢理投げ飛ばす。

ガシャンッ!


キッチン前に叩きつけられた。

賢人が言う。

「良いねぇ。その顔。」

あいの表情は、恐怖で歪んでいた。

あいは、何だかわからないが恐怖だけが押し寄せていた。

目に入ったのは、キッチンに叩きつけられた時に落ちた、果物ナイフ。

あいは、ナイフを手に取ると賢人に向けた。

賢人は、ニヤニヤしながら言う。

「良いじゃん!ゾクゾクするぜ!」

あいの手は震えてナイフを今にも落としそうになっている。




ガチャリ…

玄関の扉が開く音が妙に響いた。

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