飛梅ちゃん
ピタリピタリと裸足で廊下を歩く音が聞こえる。

賢人は、ビデオカメラを回しながらその足音に気付く。

「やっときたか。」

あいは、震えながらナイフを賢人に向けたまま、賢人の口を見ている。

賢人は振り向くこともせずまた一言言う。

「早く入ってこいよ。」

まだリビングに入ってこない人影が言う。

「もーいーかい?」

賢人は、凍りついている表情のあいを見ながら言う。

「待ってたぐらいだぜ。」

男性の声がもう一度尋ねる。

「もーいーかい?」

賢人は、少しイラついて言う。

「早くしろよ!もう良いよ!」

その言葉を聞くと、足音はリビングの中に入ってきた。

賢人の後ろに足音は止まる。

あいの悲鳴が響く。

賢人は、あいの悲鳴に動揺して振り向く。

そこには、赤いワンピースの少女が立っていた。

賢人はビデオカメラで少女を見つけて叫ぶ。

「何だ!お前は!」

少女が賢人を見る。

「みぃ~つけた…」

賢人は尻餅をつくと、ビデオカメラを少女に投げつける。

少女は、おかっぱ頭の柔らかい髪の毛を揺らすと言った。

「甘露の悪意って久しぶりね。」

少女は賢人にゆっくり近づく。

賢人は座りながらゆっくりと後ろに下がる。徐々に、あいに近づいていく。


「いやぁぁーー‼」

あいの叫びの後、血が飛び散る。

あいのナイフが賢人の背中を刺していた。

なぜ刺したのか、それは賢人の背中の肩越しに少女の顔が突然現れたからだ。

賢人は叫ぶ。

「いてぇー!いてぇよ!何すんだよ!」

賢人は後ろに思いっきり腕を振る。

あいの顔面に手の甲が当たり、左の眉の辺りを怪我をした。

少女が今までにない不気味な笑顔を作り言った。

「二人とも開いたね。」





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