いつかそんな日がくればいい。【短】
「良かった!いっぱい買ったから一緒に食べよ!」
そう言って嬉しそうに満面の笑みを見せる白田さんに心臓が跳ねるのを、俺はもう無視するなんて出来なかった。
俺、どうかしてる。
さっき失恋したばかりだぞ?
それが、どうして今この子にこんなドキドキしてるんだ?
吉川にだって、こんな気持ち抱いたことはないのに。
その、嬉しそうに赤らめた頬に触れたい。
…とか。
でも、触れたらもっと触れたくなりそうで…。
自分が自分でなくなるようで、少し怖い。
なんて。
「松田君?どうしたの?」
「……っ」
小動物のように大きな目を潤ませて、心配そうに俺を見る白田さんに、俺の理性がグラつくのが分かった。
–––––ドンッ
「わっ…」
白田さんの背中に通行人がぶつかり、よろめいた白田さんの手からベビーカステラが一つ転がる。
「あー!もう…もったいないなぁ」
それを拾い上げた白田さんは、悲しそうな顔でそれについた砂を払うと、ハンカチに包んでから巾着袋の中にしまった。
その一連の動作が、妙に大人びて見えた。
「ん。」
「え?」
差し出した俺の手をまじまじと見る白田さん。
「手、繋ごう」
「……は?…なんで?」
「白田さん。危なっかしいから」
「……」