いつかそんな日がくればいい。【短】
いつかそんな日がくればいい。
入道雲を浮かべた青い空。
照りつける太陽に肌がジリジリと焼かれるのを感じながら、俺はホースの先からチョロチョロと出ている水を眺めていた。
「湊っ!」
「は?」
「は?じゃないわよ。あなたトマトに水やり過ぎよ」
「…あ。」
しまった。
ぼーっとしてた。
俺が水やりをしていた庭の花壇には、大きな水溜りが出来始めていた。
「トマトには、あんまり水をあげすぎちゃダメなんだからね!」と愚痴を零しながら洗濯物を干す母さんを横目に、俺は蛇口を閉めた。
あの祭りの後、俺は白田さんを家まで送って行った。
終始無言で俺の隣を歩く白田さんに、“告白なんてしなければ良かった。”だとか、
“それでも、言わないよりずっとよかった。”だとか、
白田さんの家に着くまで、そんな二つの気持ちが押し問答していた。
それでも別れ際、「さようなら」と言って少し俺に申し訳なさそうな顔で家に入って行った白田さんに、気にした素振りを見せないように笑顔で手を振ったけど…
見送った後俺は、大きな溜息と共にその場に屈み込んだ。