いつかそんな日がくればいい。【短】
一日で二人に失恋するとか…
俺はどれだけバカなんだ…。
せめてもう少し日をおいて…とか、選択肢は色々とあっただろ。
こういう時、つくづく自分は子供だと実感する。
目の前で泣いている好きな子に、自分の理性をコントロールすることが出来なかった。
想いの届かなかった彼女を、想う人間がここにいることを伝えたくて仕方がなかったんだ。
「湊、今日は夏期講習ないんだっけ?」
「うん」
「じゃあ、少し渚の相手してあげて」
渚(なぎさ)とは、俺と12も離れた妹だ。
仮にも受験生に妹の世話を頼むかね…。
そう思いながらも、俄然やる気だった。
だって…
「にーちゃ〜!」
「渚〜おいで〜♡」
3歳で無垢な妹は、物凄く可愛い。
もう一度言う。
物凄く可愛い。
縁側で小さなサンダルを「んしょ!んしょ!」と言いながら一生懸命に履くと、嬉しそうに俺に飛びついてくる妹。
そんな妹を抱き締めて、グリグリと頰ずりするのが、俺の至福の時だ。