いつかそんな日がくればいい。【短】
「どうしたの?家まで来るなんて…」
「急にごめんなさい。ちょっとだけ、話せる?」
俺はチラリと庭に目をやる。
母さんが、渚をかまうフリをしながらこちらに耳を傾けているのはバレバレだ。
「場所、変えよっか」
**
蝉の鳴き声が、夏の暑さを更に際立たせる 。
強い太陽の日差しを浴びて、隣を歩く白田さんの肌が更に白く発光して見えるもんだから、俺は心臓を宥めるのに必死だった。
浴衣も良かったけど、私服も新鮮だ。
デニムのショートパンツに女の子らしいキャミソール。
今日は、ロングの髪を束ねずに下ろしている。
くせ毛なのか、ウェーブがかかったその様子が、いつもより彼女を大人びて見せた。
「よく家が分かったね」
「うん。あなたのことを知ってる女子に聞けば、大概分かるわよ」
「え。何それ。なんか怖いんだけど…」
眉をしかめる俺に、彼女の視線が不自然に突き刺さる。
なんだなんだ!?
俺の顔なんかついてるのか!?
み…見すぎっ…。
彼女は、俺をじっと見つめていたかと思うと、その口元がグニャッと緩んで、
「ぶっ!あははははは!!!」
腹を抱えて笑い出した。